先輩からの卒業 -after story-



「私も巧くんのことが大好き」


巧くんの胸に顔を埋めながらそう言葉にする。


どうせ、目が冷めたときには何も覚えていないだろうから。



「ほら、もう寝ないと」

「ん、トイレ行ってから寝る」


巧くんはそう言うとおぼつかない足取りで廊下を歩いて行った。



私はその間に歯磨きを済ませる。


あとは寝るだけ。そんなことを思っていると、廊下の方から「痛ッ……」という声が聞こえた。

その言葉に慌てて廊下に出ると、しゃがみ込む巧くんが目に入った。

怪我をした方の脚首に手を当てている。



「た、巧くん?どうしたの?脚痛むの?」

駆け寄って、私も同じようにその場にしゃがみ込む。


「トイレのドアで……小指ぶつけた」

小指、小指ね。よくあるやつ。


その言葉にホッと胸をなでおろす。

……小指も地味に痛いけどね。


「大丈夫?」

「大丈夫、大丈夫」

そう言いながら、顔をあげた巧くんは
私の唇にそっとキスをする。


唇に残る、甘い香り。

最後に飲んでたチューハイかな。

……ていうか、この酔っぱらい色んな意味で危険だ。


「巧くん、先に階段上がってね?心配だから」

そういうと何故かにこにこと笑う巧くん。