閑也は少し話しただけで、少し抜けていて掴みどころのない奴だと感じた。
さっき俺に声をかけてくれたのは、自分もよくぼーっとして、置いてけぼりをくらうことがあるかららしい。
「巧は何かサークル入る予定?」
「俺はできるだけバイトに力入れたいから入らないと思う。閑也は?」
「俺はサークル入るくらいなら寝てたい。一人暮らし始めたばっかだから、飯作るだけで精一杯。今日の晩御飯もまだ決めてない」
「おー同じ。俺も最近一人暮らし始めたんだ。一人暮らし始めたら実家の有難みがわかるよな」
「本当それだよな」
そんな話をしていると、先生らしき50代の男性が教室に入ってきて挨拶を始めた。
こうしてると高校よりも少人数のクラスって感じで、あまり大学生になった実感がない。
「じゃあ、今日はこれで解散。お疲れ様」
先生がそう言ってパチンと手を叩くと、ぞろぞろと生徒達が教室から出ていく。
俺も閑也と話しをしながら、駅までの道を歩いた。
ホームに着いた瞬間、目の前を走り去った電車。
次の電車が到着するのは10分後。
「巧もこの電車乗るんだよな?」
「ああ。まさか同じ方向だとは思わなかった」
「どこで降りるの?俺は✕✕駅」
「俺は○○駅。一駅違いだな」
閑也とは入学式の時といい、何かと縁があるみたいだ。
「椅子あるし、座って待ってる?」
「そうするか」
俺達はホームの空いていた椅子に腰を下ろす。



