「きたきた! 奈々ちゃん、もうだいじょうぶだよ」


 すごい勢いで迫ってきたのは、ヘリコプターだった。


 私とハルくんの頭上で、ピタッと止まってホバリングしてる。

 強い風圧が吹き降りてきて、私はヘルメットを飛ばされてしまう。

 二人がいる場所を中心にして、海面に大きな円形の波紋が広がっていく。


「気にしなくていい!」


「でも……」


「そんなことより、今からアレに乗るから!」


「どうやって?」


 ヘリコプターのエンジンと風を切る音でよく聞こえない。

 そう思ってた矢先、上空から何かが降りてきた。

 ワイヤーロープの先に、鍵型のフックと黄色いスリングがある。

 ハルくんは素早く手でワイヤーロープをつかみ取り、私の体を包み込むように手際よく黄色いスリングを取り付けた。


 体に装着してるハーネスにフックをかけるハルくんは、私の体を強く抱きしめながら上空のヘリコプターに合図を送ってる。


「行くよ」


「ちょっと、なにが起きるの!?」