呼吸をしてないのに、力強い泳ぎは変わらない。

 ハルくんは、一気に海面を目指していく。


 そして、私たちは太陽の光を浴びる。

 海面からそろって顔を出すと、すでに夕焼け空だった。


「くそっ、けっこう流されたか!」


 あれほど無呼吸で泳いでたのに、涼しい顔で悔しがってる。

 海上保安庁の潜水士は、スゴイ人なんだって関心しちゃうよ。


「仲間の船は? 私たちこのまま救助を待つの?」


「ちょっと潮に流されたけど、きっと見つけてくれるさ」


「?」


 私には、ハルくんの言ってる意味が分からない。

 ……その時。


 遠くから空気を切り裂くような轟音が聞こえてきた。

 バラバラと上空で鳴り響く音が、だんだ近づいてくる。