「奈々ちゃん、どうした?」
「いまさらなんだけど……ハルくんは何者?」
顎まで浸水してる緊迫した状況で、ハルくんは静かに口を開いた。
「俺は、海上保安官で潜水士なんだ」
「えっ、潜水士ですって!」
「海上保安庁にいる120名の潜水士、その中から選ばれた36人の精鋭」
あっけに取られる私に向け、目を細めて言ってくる。
「羽田空港を拠点にした特殊救難隊の一人なんだよ、黙っててゴメン……」
「それって、超エリートじゃ……」
私が口を開いて話した瞬間、船内が一気に海水で満たされた。
水中ライトを持ったハルくんが、マウスピースを差し出してくる。
私は急いで口にくわえ、酸素を吸って心を落ち着かせた。
会話のできない海中、ライトで明るくなった船内でハルくんは私の手を引く。
海水で満たされた船内、クルーザーが姿勢を変化させ船首を下に向けていく……



