「これを被って、船が衝突した時に頭を打ち付けてるはずだから」
「そうだけど……」
「泳いで船外へ出る時、頭部を守れるだろ」
「わかった……」
渋々だけど、私は言われた通りにヘルメットを被る。
すでに海水は首まできてて、緊迫した状況。
でも、冷静な状況判断と優しい説明で、何とかなるんじゃないかと思えてきた。
「船内に海水が満たされたら、このクルーザーは船首を海底に向けて沈んでいく。出口は海面に向いてるから、ここから一気に脱出しよう」
私は口を噤み、覚悟を決めて深く頷いた。
「船外に出るまで息を止めてるんだ、その後は交互に酸素を吸う! いいね!」
「うん」
ハルくんが背中に背負ってる酸素ボンベのレギュレターを見て「残圧よしっ」と口に出して確認してる。
「ごめんなさい、ハルくん……」



