「鼻呼吸ではなく、口呼吸で! そんな感じ、奈々ちゃん、いけるね……」
私は、ハルくんから言われた通りにしてるだけ。
スキューバダイビングの経験はないし、海に潜るのが怖いからマリンスポーツとは無縁だよ。
「じゃあ、今度は俺が」
そう言うと、ハルくんは私が手渡したマウスピースを口にくわえてしまった。
「ええっ! それって私が……」
ハルくんは、何度か酸素を吸った後、私にマウスピースを差し出してくる。
「今度は、奈々ちゃんが吸って」
何が何だか分からないけど、言われた通りにしてたら頭が冴えてきた。
低酸素状態を判断しての対応なの? ハルくん……
「こんな調子で、海に潜ったら交代交代、酸素を吸うから」
「えっ、海にもぐるの? マウスピースを交換しながら酸素を吸う? できないよっ!」
「だいじょうぶ、俺たち幼なじみだろ……絶対に成功する……」
ハルくんは、自分が被っていたヘルメットを脱いで私の頭に乗せる。



