「この船は、他のクルーザーとスピードを競うように併走してたらしいです」
「うん……」
「貨物船の船首に衝突、船上にいた人は海に投げ出されました」
「で、どうなったの!」
「事故を目撃した他のクルーザーやプレジャーボートに救助されたので、みなさん無事です」
「よかった~」
「意識のあった船長に確認してもらうと、乗船時は五名だったと証言してます。でも、救助されたのは四名……奈々ちゃん、キミ一人だけが行方不明だった……」
「そうだったの……」
「村本 奈々さん、アナタをこれから救助します」
いつの間にか、海水は胸元まで増えている。
こんな状況で突然姿を見せた幼なじみに、何ができるって言うのよ……
「お願いハルくん、私を残して逃げてっ!」



