「奈々ちゃん、怖かったらゲストルームに行きなよ。冷蔵庫にミネラルウォーターもあるしね」


「ゲストルームって……」


 サトちゃんが指さす方に視線を向けると、扉があった。

 階段を下りて船底に向かう部屋がゲストルームらしい。


「サトちゃんゴメンね、ちょっとベッドで休ませて……」


「うん、わかったよ」


 すごいスピードで疾走するクルーザー、私は足下をヨロヨロさせながら扉を開いて階段を降りていく。


「そういえば、私がサトちゃんに許可をもらうって変じゃない? 所有者の専務だったら分かるけど、なんでだろ……」


 あまり頭が回らないし、考えがまとまらない。

 とりあえずベットにダイブ、大の字になって枕に顔を押しつけた。


「あれ?」


 鼻をクンクン、どこかで嗅いだことのある香りが鼻孔をくすぐる。


「この香水の臭い、サトちゃんのだ……」