「奈々ちゃん、上がろうよ」
「うん……」
私はサトちゃんに手を引かれ、階段を登って外に視線を向ける。
波は穏やかだし、船の揺れも少ない。
速度もゆっくりなので、ちょっと胸をなで下ろす。
「はあ、良かった……」
私は船首のほうに目を向ける。
すると、運転席に専務が座っていた。
ちょっと気性が荒くて怒りっぽい専務が船を……
でも、このクルーザーの所有者なんだから大丈夫だよね。
ゆっくりと離れていく岸壁を横目に、私は船内の椅子に腰を下ろした。
「とりあえず飲もうか!」
「えっ……」
サトちゃんは置いてあったクラーボックスの蓋を開け、カンビールを取り出してる。



