ちょっと抵抗はあったけど、私はクルーザーに乗り込んだ。
視線を前に向けると、船内にサングラスをかけた専務が立っている。
「よう、村本君」
「専務、おはようございます。本日はお誘いありがとうございます」
私は営業スマイルで頭を下げながら、丁寧な言葉づかいで答えてしまった。
つい、オフィスにいる時と同じような態度で接してしまう。
「ここは会社じゃないんだ、楽にしていいんだぜ」
そう言ってくる専務の服装を見ると、釣りを楽しむような感じに見えない。
私だけ真に受けて、すごく浮いてる ……
「釣りは、しないのね……」
気を取り直して、船内を見回す。
すごく豪華で、驚きを隠せない。
「奈々ちゃん、こちらへどうぞ」
サトちゃんが手招きしてる先には、運転席がった。



