「ゴメンね、なんでもない」
口を噤むスーさんは、私に何も教えてくれない。
ごまかすように、サトちゃんの後を追ってクルーザーに乗り込んでしまった。
「私に言えないことかな? すごく気になってしまうよ……」
その場に立っていると、合コンで一緒だった男性が声をかけてきた。
「村本さんも乗ってくれる」
「あっ、はい……」
私がハルくんを追いかけて居酒屋を飛び出した後、三次会まで行ったと聞いてた。
サトちゃんとスーさんは、この男性と意気投合して親しくなったみたい。
さっき車内で聞いたんだけど、専務の友人でもあるんだって。
SEさんも、取引相手の役職から合コンをセッティングするよう言われ、声をかけてさそった女性が私たち。
同じ会社の女性だと直前に気づいた専務は、ドタキャンして逃げたようね。
でも、この男性から凄く楽しかったと聞かされて、専務は今回の釣り大会に踏み切った。
課長も、社長の息子さんから強く言われたら断れないよね……



