自分の体は海水に浸かったまま、私の体を岩場に上げようと必死だ。


 滑る足場の代わりに、手の平で私の足を押し上げようとしてる。

 私は、なんとか岩場の上に登ることができたけど……

 ハルくんは上半身が海水に浸かったまま、波に体を打ち付けられて動きを止めてる。


 私は手を差し出して引っ張るけど、彼の体は動かない。

 だんだんと、力尽きていくハルくんを目にした私は大声を出す。


「お父さ~ん!助けてーっ!お父さーん!早く~っ!!」


 私の奇声を聞きつけた父が、急いで走り寄ってくる。

 岩場にしがみつくハルくんを、一緒に引き上げた。


「ハルくん、しっかりして!ハルくん!」


 疲れた表情で私に視線を向けたハルくんが、静かに口を開く。


「奈々ちゃんは僕が必ず助けるから……だいじょうぶだよ……」


 ハルくんに抱きつき、泣き叫ぶ私……


「ハルくん!!」


 自分の声に驚いて飛び起き、周りを見回すと私の部屋。



 どうやら、私は小学生の時に体験したトラウマの夢を見てたらしい……