「奈々ちゃん、今日ぐらいそれ外してもいいんじゃない?」


 社員証がブラーン、いつもしてるので違和感がなかった。

 しかも、上着を手に持ったままのブラウス姿ではないですか!

 慌てて上着に袖を通し、社員証を内ポケットに入れる。


「ごめんなさい」


 鏡で何を見ていたのか、気が焦ってると冷静な判断を失ってしまう私。

 過去にも色々な失敗をしてきた。


「失礼します」


 椅子に座った私は、対座する男性に視線を向ける。

 ネクタイにスーツ姿、相手の人も会社帰りの格好。

 これから新しく取引する、会社の社員さんとの交流会にも見えてしまう。


 でも、これは若手IT社長さんとの合コン。

 のはず……


 向かって右端からSEさん、真ん中にいるのが社長さん?

 私の正面の席が空いてる、三人目はまだ来てないのかな?


「ごめんなさい、急遽これなくなった人の代わりに、別の人を呼んでますので……」

 
SEさんが恐縮しながら話してくる。