「いらっしゃいませっ!」


 店に入ると、ここは八百屋か!って突っ込みたくなるほど威勢の良い掛け声が響く。

 場所の名前を聞いて、薄々だけど気づいてた。

 予感は的中、みんながよく知る居酒屋さん。


 サラリーマン御用達の気軽に安く飲食できる、おサイフに優しい場所。

 どうせなら、マスターがいる静かでオシャレなお店のほうが良かったのに……


「奈々ちゃん、こっちだよ~んっ!」


 天然OLのサトちゃんが、右手をヒラヒラ振りながら大きな声で叫んでる。

 その横に、苦笑いのスーさんもいた。

 だよ~んっ!とか大きな声で叫ぶから、ほかのお客さんも薄笑いしながら私を見てくるじゃないのよ。


「もう……」


 恥ずかしい気持ちを抑えて、私は二人が座る席へ向かう。

 すでに着席してるサトちゃんとスーさん、目前に大きな長方形のテーブル。


「すいません、遅くなりました」


 営業スマイルを見せながら、私は相手の男性に軽く頭をさげる。

 その時、首から何かが垂れ下がった。