フロアに残っていた数人の社員さんが、私を見ている。

 思わず、感極まって叫んでしまったけど、ここは会社だった。

 残業する社畜OLが立ち上がって何か叫んでる、ぐらいの冷ややかな視線を感じながら私は帰り支度を始める。


「いっそげ~……」


 今度は小声で、上着を片手に持ってフロアを出た。


「わっしょい、わっしょい……」


 急いで小走りをしてる時、無意識に出てしまう掛け声。

 静かな会社の廊下に、パンプスの音がカツカツと響き渡る。


 正面玄関はすでに閉まってるので裏口へ……

 警備員さんに挨拶をして、裏口から飛び出した私は大通りへ向かう。

 そこへタイミングよく、タクシーが通りかかった。


「止まって!」


 声は出さなくても、手を上げれば停車してくれる。


 私はいつも、気が焦ると身振り手振りのオーバーリアクションになってしまうから気をつけないとね……