「もうちょっとだから、先に行ってて」


「え~っ、奈々ちゃん遅れてくるの~! つまんな~い!」


 目尻をヒクヒクつり上げながら笑顔を見せてるけど、心の中ではイライラ。

 こういう人だって分かってるのに、気持ちを抑えきれない。


 フロアに人の姿が無くなってきたけど、私は今日中に終わらせる書類にてこずってる。


「スーさん、もう向かってるみたいだよ~」


「サトちゃんゴメン、少し遅れるって伝えといて」


「かしこまり~」


 サトちゃんは、私に向かって手をヒラヒラ振りながらフロアを出ていく。

 そんなに時間はかからないで終わりそう。

 急いで指先を動かし、高速タイピング。


 私は合コン相手のことより、二人に嫌われてしまうことを恐れてる。

 その場の雰囲気を壊したくないし、みんなに楽しんでほしい。


「私の気持ち、課長にとどけ!」


 そう叫びながら、私は完成した書類を課長宛メールで送信する。