日葵は、ただのアンドロイドではなかった。

人間の意思を借りた、アンドロイド。



日葵は椅子に座らされたまま、花を添えられて稼働を停止している。

その隣には、『提供者』……つまり、人間の姿の日葵が埋葬されていた。



この人の意思を借りて、俺たちは育てられたんだ。

この人が死を望まなければ、俺が孤児ではなければ、出会えなかった。



「パパは、結婚のこと、後悔してる?」

「してねぇよ。感謝しかしてない。そもそもこんな無茶に付き合ってもらえたことすら奇跡ってもんだ」



なぁ、日葵?

お前の体に別の誰かの思考が入ったところで、俺はお前だとは思えないんだよ。

日葵が日葵だから、こんなに愛しいんだ。



お前はこの後、資料館に展示されることだろう。

俺は毎日のように会いに行く気だ。

お前のこと、絶対に忘れたくないからな。



忘れられない『日葵《キミ》』を背負って、キミの分まで生きていくよ。



「『愛とは解りませんが、間違いなく宵を好きでした』」

「――っ」

「ママがカプセルの中に入る時、兄ちゃんに言い忘れたって――」