12年を五回繰り返すと、60年。

提供時点の年齢も合わせると、大体4~5回のサイクルで寿命となる。



俺と善、二人のサイクルを合わせて2回、それに俺の前にも一人いることは解っていたから最低3回のサイクルは確実だった。

善の後にもう一人いるかどうか、それは俺の中では賭けだった。

もしいたならば、その後12年は保証される。

寿命が近いなら、善の後にはもう稼働を停止させられ、提供者は契約の通りに安楽死の道を辿る。



提供者は元々、その安楽死を望んでこのプログラムに参加したのだから。



日葵を俺のものにしたいのなら、このタイミングしかなかった。

もし稼働を停止させられるとしても、一時的なことだとしても、この幸せを――二人共有できるのなら。



「――――宵兄ちゃ……パパ、大丈夫?」



真っ黒なスーツを着て、日葵の眠るカプセルにもたれかかっていた俺に、善が寄り添う。



「お前も、知ってたのか」

「……宵パパには話さないでってお願いされてたの、ママに」

「……日葵が、か」

「施設の人とも、ママのママとも、みんなで考えて……でも兄ちゃんはきっと解ってて賭けに出てるんだろうって」

「施設の奴ら?」

「うん。それならママが……いつも通りのままお別れしたいって」