え……?

叱った、のか……?

特に何か聞こえたわけでもなく、声がピタリと止まっていた。



扉の先で何が起きているのかも分からない私は、腰が抜けたまま疑問符を頭の上にたくさん出すことしか出来ない。

すると、この部屋とあちらの作業部屋とを繋ぐ扉からノック音が響き渡るので、恐る恐る「はい……?」と返事をした。



ここは、返事をするしかない。

相手がわからなくて怖くとも。

咲くんを信じるならば、私に待っているのは癒しとやら……らしいから、たぶん、大丈夫。

殴られたりはしない、はず、うん。



扉を開いて現れるのは、大きめのパーカーの帽子を深くかぶった男の子。

愛想も何もなさそうな無感情を宿した瞳が、藍に紫を差したようなプルシアンブルーの前髪の隙間からゆるりと私に向けられる。



癒し、とは?????



こ、この人もなんだか、怖いのだけれど。

扉を閉めて、一歩一歩近づいてくるその人に、私は警戒心むき出しで手元に抱えていた画材とお弁当の入ったバッグを握りしめる。

思えば、昨日からこの子たち(画材)には頼りっぱなしであった。