「…………じゃあ表情いらなくないですか!?」
「雰囲気が大事なんだよこういうのは」
いおくんは難しい要求ばかりする。
琥珀はポーズするのに慣れてないから一苦労だよ。
琥珀はいつも景色を描いてるか、人も描くけど描かれる側にはあんまりならないもん。
ポーズとかよくわからない。
「アイツはもう、描かせないだろ」
「……え?」
「アイツは俺を避けてんだから」
みっちょんのこと?
みっちょんが、いおくんを避けてる……?
そんな話、聞いたことがなかったけれど、確かに元からお互いに仲良しさんみたいだったのに、保健室でいおくんとみっちょんが会うまで、琥珀はそのことを知らなかったし、みっちょんから聞いたこともなかった。
確かに不思議だった。
「なんか避けられるようなことした?」
「なんでわかんだよ」
「みっちょん、ちょっとやそっとじゃ人を避けるようなことはしないからなぁ。堂々としてていつもカッコイイのよっ」
「知ってる」
そう言ったいおくんは大きなため息を吐く。
「やっぱ嫌われたんかな……」
ぽつり、呟くいおくんは、なんだか寂しげで。



