今日はあの胸筋むき出しで絡み付くような二人はいない。
だがしかし、その人は床で死んだようにうつ伏せに寝転んで、ピクリともしていなかった。
「ヒッ!!!」
チカチカと不定期に点滅を繰り返す照明。
その人の手に持たれた筆にべったりと付いた赤色のナニカ。
(多分恐らく大方絵の具)
這いずるようにドアに向けられたまま力尽きたような手。
これこそ!!これこそホラー中のホラーである!!!
嫌だよここ事故物件とかなったりしたら怖くてもう来れないよ!!??
朝だというのになんだこの部屋の暗さは!!!
昨日こんなにここの照明点滅してたっけ!!?
「あちゃあ」
「な、な、なっ……!!!」
「こっちもかぁ。ごめんね、今、回収班呼ぶから」
そう言ってスマホを取り出して電話をかける咲くん。
もう、何が何やらであって、私は慣れない場所での初めての体験に、パニックしか起こさない。
ホラーとか苦手なんだよおおお!!!
その右手の筆は、赤色が血のようにべっとりと床やら手のひらやらにこびりついている。