けれど、いおは文句を言わない。
これが練習の積み重ねだとお互いに解っているから。
「自分じゃどうなってんのかわかんねぇ」
「めちゃくちゃ描きにくかったわ」
「ちょっとお前もしてみろよ」
「嫌よ、バカじゃないの?」
その代わり私は頭にペットボトルを乗せられて、膝立ちさせられたポーズを描かれた。なぜ。
「ちょっと、胸盛るなし!!」
「いーじゃん、今すんげぇ姉ちゃんの出てくる漫画描きてぇんだよ」
「少なくとも私よりもっと参考にする人いるでしょ」
「漫画描いてんのなんて話したくねーのに、すんげぇ姉ちゃん描きたいだなんて言ってみろ?」
「ただの変態じゃない」
「俺をただの変態にさすんじゃねぇ」
「間違ってはないけどね」
そんないおとは、小学校の卒業式以来、高校に入るまで会っていなくて。
入学式にすごく目立つオレンジ頭の奴がいるなぁと思っていたら、それが自分のよく知る奴だった時の衝撃やら、他人のフリしたさやらの気持ちは忘れられない。
「あ、いた。ミツハ」
「……人違いです」