離れていってしまうんじゃないか、嫌われてしまうんじゃないか、もう黒曜に来るなと言われたら──。
────怖い。
「琥珀、俺は知りたいんだよ、琥珀の気持ち」
「……」
「去年の文化祭で琥珀が出してた、水辺で手を取り合って眺めている絵。あの絵に俺は救われてから、ずっと琥珀のことが気になってた」
「……え」
ドクンと、心臓が大きく跳ねる。
それは、確かに文化祭の時に飾られていた作品だった。
湖の縁で手を取り合う二人、励ますようにも見えるけれど、人によっては諦めているようにも見て取れるような、そんな絵を描いた。
絵が描けなくなる前に、描いていた絵。
それは琥珀が、このまま水の中に潜ってしまいたいと思っていた一部を切り取ったものだから。
逆光で表情は見えない二人寄り添う絵。
「あの絵のこと、知ってたの……?」
「俺が、人生をリセットしたいと思っていた時に見たから。水辺はキラキラと輝いているのに、俺には二人がそのまま進んでいくんじゃないかって見えたよ」
それが救いになったとは、どういうことかはわからないけれど。



