呑まれる。

咲くんに呑まれてしまいそうだと思った。

大切なものを愛でるような、けれど逃がす気のないような強い瞳。



思い出しては顔が熱くなり、どくどく、心臓が暴れ出す。

それはもう丸呑みされてしまうんじゃないかってくらい、主導権が彼にあって。



それがどことなく、心地よくて……。



琥珀の頭は使い物にならなくなって。



だ、誰にも言えないし、車の中でもずっと咲くんのこと避けちゃうし。

パニックで他に何も考えられなくなってしまっている。



それに。



「食べるって……カニバじゃなくて……」



あぁいうことなのかって、さすがの琥珀でも気付いてしまった。

ペロリ、食べちゃうんだ。

ゆ、指先を……!!?(ちょっと違う)



ということはいおくんも……あぁいう風に……?





黒曜の一階の本棚の前でいちゃいちゃシーンを探して回る琥珀も、なかなかにシュール。



どんな気持ちで?

どんな状況であぁなったの?

そもそもなんでそういう、雰囲気みたいなことに?

琥珀はどうすれば良かったの?

なんで、琥珀は避けなかったの……?



未知なる世界の入口で、琥珀は路頭に迷った迷子さんのよう。