そういえば、未夜くんは家出してる身だった。
どうして家出をしてるんだろう?
琥珀は、まだまだ知らないことばっかりだなぁ。
「咲って不思議な人で、色んなことを受け入れてくれるんだ。俺も最初家出した頃は、黒曜の倉庫の外に出られなくて。でも咲が話しかけてくれるうちに少しずつ大丈夫になってきた」
「……え?」
「……俺、人が怖かったんだよ」
花壇の端のベンチに促されると、琥珀は未夜くんの隣に腰掛けた。
みっちょんはまだ地図を挟んで口論しているようで……どうやら現在地を教えているみたいだった。
「情けない話だと思うけど、俺話すの苦手」
確かに、最初の頃がそうだった。
口数が少ないかと思っていたけれど、ゲームで打ち解けていって、トーンの扱いを教えて貰って。
どんどん話してくれるようになったのだ。
「……未夜くん、琥珀によく話しかけてくれるよ」
「それは琥珀と話したいから」
「……!!!琥珀も未夜くんと話すの好きだよっ」
未夜くんは困った顔をすると、その頃のことを思い出すように空を見上げる。
その悲しみの滲む顔の理由を、琥珀はまだ知らない。



