不良さんたちの、いっちばん偉い人、なのに。

全然、怖さがない。



「ただ、君のおかげで助かってるのは本当のことだし、こちらとしてはこの先も来てくれるようなら大歓迎したいところ」

「下の人たちとか……私のこと嫌がったりしませんか?」

「俺が連れて来てるんだから何も文句は言わせないよ。とは言ってもチラチラ様子伺ってくる奴らもいたから、君のことは気になっていると思う」



不良さんが、ちらちら、様子を…………???

それは、なんだか気になる。

そう聞くとなんだか可愛いような気がしてくる。



「見た目に反して可愛い奴らだよ」



それは、本心からそう思っているようで。

この人はあの場所が、あの人たちが、本当に好きで、蔑んだり見下したりもしていなくて。

少しだけ、ほんの少しだけ、『黒曜』という組織がどんな形をしているのか、見えてきた気がした。



なんというか、お母さんみたいな人だ、この人。

安心してしまう……。



「咲、くん」



私は、先程知ったばかりの彼の名前を呼ぶ。



「うん?なぁに?」

「お願いが、ひとつだけ……」



少し、悩んだ。