送迎というなら運転手さんだけでもいい気もするけれど……一対一だとそれはそれで怖いから、送り迎えでのあの人の存在は、なんだかんだいって助かっている。
手を出される気配もないし……思っていたよりは安全そう。
というかもはやそんな余裕もなさそう。
恐怖で忘れていたけれど、今日こそさすがに名乗りたいし、名前を教えてもらいたい。
そう決意し、シャーペンとデザインカッター、消しゴムの入った筆箱と、一応小さいスケッチブックとお弁当もカバンに入れて。
昨日より身軽な格好で、ちゃんとTシャツとスキニーを履いて(ここ重要)、家を出た。
ちなみに昨夜の夢は、例のヘッドホンに追いかけられる夢だった。
「おはよう。今日もよろしくね」
「……おはよう、ございます」
昨日と同じ真っ黒な車の後部座席から登場した彼に、エスコートされるように車内へと導かれていく。
この人も漫画の関係者なんだろうか……?
六時間は寝たとはいえ、昨日の疲れはまだとれていない。
六時間じゃなんなら足りない。
八時間は寝たかったけれど、そうもいかず。



