いおりさんは、怖い人なんかじゃなかった。

いや、確かにまだ雰囲気はここで一番怖そうに見えるんだけれども……人の意見を無闇矢鱈と否定しない人だ。

クリエイターとしての誇りもしっかり持っている。



それだけでなんだか、心がほかほかしていた。








未夜くんに数切れ渡したたまご焼きたちはぺろりとすぐに食べられてしまった。

男の子ってご飯食べるのみんな速いのかしら。

世のお母さんたちは大変だわ。



私たちがお弁当を置いていたソファに戻った時には既に、ベルギーズ(国旗色)の食事は終わっていた。

未夜くんの分と、私の分もどうやら取っておいてくれていたらしく、ぽつんと残っている。



「あ、あの、女神さん……」

「ん?」



私がから揚げをもぐもぐしていると、赤髪くんが昨日のように『女神さん』と呼んできたので反応する。

というかこれで反応できちゃう琥珀ちゃんの順応性強くない??



「……さっき、いおりさんのところ……大丈夫だったんすか……?」



恐る恐る聞いているようなその声は、微かに心配と興味を含めていて……赤髪くん以外の二人は寄り添って震えている。

なぜそんなに君たちは怯えているんだ。

まぁ私もさっきまでは人のこと言えなかったけど。