「教室にいたのは田中くん達クラスの中心メンバー数人だった。私のことを話してた」
話し声が聞こえても聞かずすぐに扉を開けてしまえば、あんな目に遭わずに済んだかもしれない。
あの時、ためらわず扉を開けていればよかったのかもしれない。
聞こえてきた会話は私が自惚れていたと自覚させるものだった。
『なぁ、お前って季澄のことどう思ってんの?』
『いきなりなんだよ?どうもこうもねぇけど』
『だって季澄、絶対にお前のこと好きじゃん。お前だって気づいてんだろ?』
『まぁね。好きなのはバレバレだな』
『答えるつもりねぇの?季澄って地味だけど、顔は悪くないじゃん』
『顔は良くてもオタクだぞ?オタクなんか気持ち悪すぎて無理だわ』
封印していたはずの言葉達は一言一句思い出せてしまう。



