私は何も分かっていなかった。
幸せだけの日々が続くわけじゃないってことを。
幸せと不幸は隣り合わせだということを。
どうして幸せなんかに浮かれていたのだろうと。
三宅くんがちょうどお手洗いに行き、私1人で雑貨を見ていた。
今の雑貨は本当に幅広くて、見ているだけで面白い。
そんな時だった。
「....季澄?」
私の名前を呼ぶ声が聞こえた。
.....ドクンと心臓が嫌な音をたてた。
季澄と呼ぶのは、三宅くんじゃない。
いつも一緒にいる凛子と智でもない。
この声は....
「やっぱり季澄だよな?」
私をなれなれしく季澄と呼ぶその人物はずかずかと近づいてくる。
幸せだったものが音をたてて崩壊していく───。



