「あ、うん。こんにちは」

「二人共、今お食事ですか」

「はーい」

それはそれは。

「ここ、座っても良いですか?」

と、僕と天音さんの、向かいの席を指差す。

「どうぞ。良いですよね、天音さん」

「うん、勿論」

天音さんも快諾。

この人は、嫌だとか無理だとか言うことは、あんまりないからな。

それにしては、女装は嫌がったんだよな。何故か。

「それじゃ、お邪魔します」

「お邪魔しまーす」

「はいどうぞー」

と、言っても。

僕、そろそろ食事終わりなんですよね。入れ違いになりそう。

オムライス食べ終わったので、デザートのチョコプリンに取り掛かる。

すると。

「ナジュ先生、プリン、どっちにしたんですか?」

と、オムライスにぱくつきながら、生徒が聞いてくる。

ん?

「どっちって、何か種類があるんですか?」

「あれ、気づかなかったんですか?」

「ベースは同じチョコプリンですけど、上にかかってるソースが、マンゴー味かラズベリー味の二種類あるんですよ」

え、そうなんですか?

言われて、よく見てみると。

成程、確かにソースが二種類。

僕のはマンゴーソースの方だ。

わー。全然気づかずに取っちゃいましたよ。

「天音さん、気づいてました?」

僕だけ気づいてなかったんだとしたら、凄く間抜けだな。

しかし。

「いや、僕も気づかなかった…」

良かった。間抜けは僕だけじゃなくて。

間抜け二号現る。

「適当に取っちゃった。僕のは…ラズベリーだ」

「良いですね。僕もラズベリーにすれば良かった」

「あれ?マンゴー嫌いだっけ?」

「嫌いじゃないですけど、ラズベリーとマンゴーどっちが良いかって聞かれたら、ラズベリーかなと」

マンゴー好きな人、済みません。

僕的には、ラズベリーのちょっと酸っぱい味の方が好み。

まぁ、気づかずにマンゴー取っちゃったんで、どうしようもないですけど。

すると、天音さんが自分のチョコプリンを取って、こちらに渡した。

「じゃあ、僕のと交換してあげるよ。僕はどっちも好きだし」

「え、良いんですか?」

あなた、お人好しにも程があるのでは。

さっきはプチトマト押し付けられたのに。

「うん。どうぞ」

「それはどうも。ありがとうございます」

なら、お言葉に甘えて。

ラズベリーソースのチョコプリン、頂きます。

今度からは、ちゃんと種類も見るようにします。

「…」

そんな僕達の様子を、じーっと見つめる生徒二人が。

不意に、こんなことを言った。

「…仲良いですね、天音先生とナジュ先生」

「えっ」

と、天音さんは声をあげたが。

実は僕もそのとき、かなり衝撃を受けた。