「ほう。二人共、デコ生徒手帳ブームは知ってたんですね」

「うん。クラスメイトが皆やってるから」

「俺はさー、ツキナが教えてくれたんだよね〜」

とのこと。

学生生活をエンジョイしているようで、その点は何よりだが…。

…この二人が、生徒手帳をどんな風にデコレーションしたのかは、気になるな。

どんな感じだろう?やっぱり和風な感じ?

麻の葉模様とか?

「お前達、どんな感じにデコったんだ?」

試しに、聞いてみることにした。

「え、見たい?」

「あぁ。興味はある」

「僕のはね、凄くセンス良いよ。『八千歳』も褒めてくれたから」

謎に自信があるらしい令月。
 
と、

「俺のはねー、ツキナにデコってもらったんだー。だからツキナの趣味だね」

園芸部の部長にデコってもらったと言うすぐり。

成程、あの子か…。あの、天然を絵に描いたような子…。

「見たい?」

「あぁ、まぁ見せてくれるのなら…」

「じゃあ俺のから見せてあげるよ。はい」

そう言って、すぐりが自分の生徒手帳を見せてくれた。

目を引く大根模様。

何だこれ?

「…何で大根…?」

ぺらぺら捲ってみたら、無数の野菜シールが貼ってあるし。

健康に良さそうな生徒手帳になってる。

「俺にもよく分かんない。ツキナに聞いて」

あ、そうか…。すぐりの趣味じゃなくて、ツキナって子の趣味なんだっけ。

「お前…良いのか?生徒手帳を、こんな好き勝手に改造されて…」

怒りたかったら、怒っても良いと思うぞ。

何で大根やねん!!って。

しかし、すぐりは。

「え?別にいーよ。ツキナとお揃いだし…。それに、これなら他の誰かに真似されるってこともなくない?」

それはまぁ、確かに。

他にも大根趣味の生徒がいるとは、とても思えないし。

よく売ってたなぁこんな生地。

買う方も買う方だが、売る方も売る方だ。

「すぐりの生徒手帳は、匂いまではつけなかったんだな」

軽く匂いを嗅いでみるが、香水や香り袋の匂いはしない。

ん?でも微かに…土みたいな匂いがしなくもないが。

それは多分、すぐりが園芸部だからだろう。

「そうなんだよ…。思ったように布団の匂いがつかなかったって、ツキナがしょげてた」

「…??」

布団の匂いって何だよ?

何の匂いをつけたかったんだ?

「羽久。僕のも見て良いよ」

令月が、ゴソゴソと制服の内ポケットを探った。

あぁ、令月も生徒手帳、デコったんだっけ。

今度こそ、和風のデザインなのかなぁと思ったら。

「…!?何だそれ…!?」

「良いでしょ?ご利益がありそうで」

予想の斜め上を行く、恐ろしいデザインの生徒手帳を見せられた。