…九死に、一生を得る。

とは、まさにこのこと。

誓いのキスで…救われる命もある。

「…やっぱりさぁ。そのまま結婚しちゃえば良いんじゃね?」

何とか一命を取り留めた俺とベリクリーデに、キュレムがポツリと溢した。

「お前、ふざけんなよ…。こっちは命懸かってるんだよ…」

危うく死ぬところだったんだからな。分かってるか?

そんな浮ついた気持ちになれるか。

それなのに、キュレムは。

「いやー…。割とお似合いだと思うけどねー」

お前、他人事だと思って呑気な。

あ、そうだそれよりも。

「ベリクリーデ…悪かったな」

「…ジュリスにキスされちゃった」

あ、うん…。

「しかも初めて。ナンバーワンキスだ…」

ファーストキスだろ。何だよナンバーワンって。

いや、言いたいことは分かるけど。

「悪かったと思ってるよ。殴って気が済むなら、好きなだけ殴ってくれ」

「何でジュリス殴るの?」

「そりゃお前…。予定にもないのに、乙女のファーストキスを奪ったからだろ…」

こんな、色気も何もないシチュエーションでさ。

女子にとっては、一生モノの傷になるだろう。

ファーストキスがこんな、好きでもない男に奪われるなんて。

本当に悪かったと思ってるよ。

でも、死ぬよりはマシだと思ったから。

「ジュリスなら嫌じゃないよ」

それなのに、ベリクリーデはこの反応。

…泣き叫んでビンタされても、文句は言えないと思ったんだけどな。

「無理しなくて良いんだぞ?」

「無理なんかしてないよ。他の人だったら、何だか嫌だけど…でもジュリスだから良いよ」

「…あ、そう…」

何で、俺なら良いのかは知らないが。

まぁ…傷つけたんじゃないんなら、良かった。

「…やっぱり結婚すれば?」

「冗談だろ…」

何故か、真顔で結婚を促すキュレムを、力なく一括して。

ともあれ、俺とベリクリーデは、無事に『白雪姫と七人の小人』の試練を乗り越え。

生存が、確定したのであった。