今、二人の女子生徒が持ってきてくれた、あのお線香。
あれ蚊取り線香なのか?
「ほら、今年って、もう二学期なのに、まだまだ蚊が多いじゃん?」
「…そうか?」
そうなのか?知らなかったんだが?
「学院の方はそうでもないよ。でも学生寮は、裏手に小さい溝があるから、そこから発生してるみたい」
と、令月。
…そうなんだ…。
「俺達はゴザの周りに蚊帳を吊ってあるから、蚊の心配はないけどさー」
「他の生徒は、しょっちゅう蚊に刺されて目が覚めるって、愚痴ってたから」
お前らは、何で蚊帳持ってるの?
「園芸部の畑の周りにも、よく飛んでてさー。畑仕事にしてるときにも、よく刺されるんだよね」
「うん。僕らは耐性があるから良いけど、蚊に刺されて死ぬ人もいるらしいしね」
「そーそー。このままじゃ死者が出ると思って」
お前らの祖国では、そうだったかもしれないが。
ルーデュニア聖王国の衛生環境なら、蚊に刺されて病気になって死ぬことはないと思うんだが。
そんなことは、ジャマ王国出身の二人は知らないので。
「この際だから、お手製の蚊取り線香を作って、皆に快適な夜をプレゼントしようと思ったんだよねー」
「うん。『八千歳』が発案者で、僕も手伝ったんだ」
「丁度園芸部の畑で、虫除け効果のあるハーブが育ってたから、それを練り込んだお手製蚊取り線香」
「二人で頑張って作って、手分けして全部屋に配ってきたよ」
「良い仕事したよねー」
「うん。頑張った」
…何、二人して良い汗かいてんの?
事情は分かったよ。分かったけど。
…何やってんの?お前ら。
「ほら、俺達前職が暗殺者だから、やっぱり邪魔者を排除をすることになると、血が騒ぐと言うか」
「やらなきゃ…!っていう使命感があるよね」
そんなことで、暗殺者の血を騒がせるんじゃない。
学生寮に蔓延る蚊を退治しようという、その心意気は買うけど…。
…だからって。
「…人の部屋に、勝手に侵入するな!」
「え、何で?」
「ちゃんと起こさないように入ったよ?」
そうだろうよ。
起きていても、気づかず侵入して、気づかず去っていくような奴らだからな。
でも違う。そうじゃない。
「皆喜んでるよ、きっと」
「ねー。学院側が何の虫対策もしてくれないから、俺達がやったんじゃんね〜。感謝して欲しいよ」
そうだな。
お前達が、その蚊取り線香を、普通に手渡しで配ってくれたんなら、感謝していただろうな。
誰が、勝手に侵入して、勝手に設置してこいと言ったよ。
お陰で今日、イーニシュフェルト魔導学院の生徒達は、揃って。
朝から、部屋の入口で煙を立てる蚊取り線香に、悲鳴をあげることになったよ。
あれ蚊取り線香なのか?
「ほら、今年って、もう二学期なのに、まだまだ蚊が多いじゃん?」
「…そうか?」
そうなのか?知らなかったんだが?
「学院の方はそうでもないよ。でも学生寮は、裏手に小さい溝があるから、そこから発生してるみたい」
と、令月。
…そうなんだ…。
「俺達はゴザの周りに蚊帳を吊ってあるから、蚊の心配はないけどさー」
「他の生徒は、しょっちゅう蚊に刺されて目が覚めるって、愚痴ってたから」
お前らは、何で蚊帳持ってるの?
「園芸部の畑の周りにも、よく飛んでてさー。畑仕事にしてるときにも、よく刺されるんだよね」
「うん。僕らは耐性があるから良いけど、蚊に刺されて死ぬ人もいるらしいしね」
「そーそー。このままじゃ死者が出ると思って」
お前らの祖国では、そうだったかもしれないが。
ルーデュニア聖王国の衛生環境なら、蚊に刺されて病気になって死ぬことはないと思うんだが。
そんなことは、ジャマ王国出身の二人は知らないので。
「この際だから、お手製の蚊取り線香を作って、皆に快適な夜をプレゼントしようと思ったんだよねー」
「うん。『八千歳』が発案者で、僕も手伝ったんだ」
「丁度園芸部の畑で、虫除け効果のあるハーブが育ってたから、それを練り込んだお手製蚊取り線香」
「二人で頑張って作って、手分けして全部屋に配ってきたよ」
「良い仕事したよねー」
「うん。頑張った」
…何、二人して良い汗かいてんの?
事情は分かったよ。分かったけど。
…何やってんの?お前ら。
「ほら、俺達前職が暗殺者だから、やっぱり邪魔者を排除をすることになると、血が騒ぐと言うか」
「やらなきゃ…!っていう使命感があるよね」
そんなことで、暗殺者の血を騒がせるんじゃない。
学生寮に蔓延る蚊を退治しようという、その心意気は買うけど…。
…だからって。
「…人の部屋に、勝手に侵入するな!」
「え、何で?」
「ちゃんと起こさないように入ったよ?」
そうだろうよ。
起きていても、気づかず侵入して、気づかず去っていくような奴らだからな。
でも違う。そうじゃない。
「皆喜んでるよ、きっと」
「ねー。学院側が何の虫対策もしてくれないから、俺達がやったんじゃんね〜。感謝して欲しいよ」
そうだな。
お前達が、その蚊取り線香を、普通に手渡しで配ってくれたんなら、感謝していただろうな。
誰が、勝手に侵入して、勝手に設置してこいと言ったよ。
お陰で今日、イーニシュフェルト魔導学院の生徒達は、揃って。
朝から、部屋の入口で煙を立てる蚊取り線香に、悲鳴をあげることになったよ。


