「お前が、これで魔導師を黙らせられると言うから信じたのに!」

「どうしてくれるんだ!?」

「これからどうすれば良いんだ、俺達は!?」

…。

…愚かしい人間共だ。

私はそう思いながら、彼らの話を聞いていた。

「このままじゃ、聖魔騎士団に見つかるのは時間の問題だ…」

「今からでも、逃げられる場所はないのか…?」

「そんなの何処にあるんだ。国境だって見張られてるんだぞ」

「それどころか、王都から出ることだって…」

逃げるときだけ、頭がよく働くことだ。

こういう手合いの連中は、いつもそう。

人を糾弾するときと、悪いことをしたときの言い訳を考えるときだけは、頭がよく回る。

無駄な才能だ。

しかも。

「いや、何とか…何とかして、王都から出るんだ。地方にある魔導師排斥論者達のグループに、バラバラに紛れ込めば…聖魔騎士団の目を誤魔化せるんじゃないのか?」

そんな安っぽい頭で出てくるのは、こんなつまらない意見だけ。

今や、『サンクチュアリ』は、全国規模で指名手配されている。

そんな『サンクチュアリ』のメンバーを匿えば、逃亡幇助の疑いをかけられることになる。

誰がお人好しに匿うものか。誰しも、自分の命が可愛いのだ。自分の命が惜しいのだ。

…お前達のような人間は、魔導師と同じだ。

利己的で、自分勝手で、自己中心的。

救いようがない。

「そ、そうか…。よし、何とかして…王都を出よう。その方法を考えよう」

「でも、どうやって…」

「それを何とかするんだよ!他に方法なんてないじゃないか!」

挙げ句、ぶつけようのない怒りを、味方に向ける始末。

…これだから、本当に…救いようがない。

賢者の石という力を与えれば、少しは賢くなるかと思ったが。

期待するだけ無駄だったようだ。