神殺しのクロノスタシスⅣ

僕が、居候させてもらっている家を出て、村の外を自由に歩き回れるようになったのは。

川でどんぶらこしてから、二日後のことだった。

どうやら左足首の怪我は、骨折ではなく、ただの捻挫だったようで。

まだ痛みはあるものの、歩けるようになった。

…と、いうのも。

厄介になっている家のご主人が、わざわざ森から木を切ってきて、お手製の松葉杖を作ってくれたのだ。

本当に、至れり尽くせりだ。

例の不味い薬湯も、ちゃんと三食飲ませてくれましたよ。

ありがとうございますね。

この家の人は、実に馬鹿親切で、疑うということを知らない。

僕としては有り難いのだが、しかしこんなに無警戒で良いのかと、逆に心配してしまった。

…の、だが。




「あぁ、あんたかい、川辺に倒れてたっていうのは?」 

「気の毒だね。大丈夫だった?」

「しかも、記憶がないそうだな。本当に気の毒になぁ」

僕が松葉杖をついて、村の中を歩くと。

通りすがる村人皆が、代わる代わる僕にそう声をかけてきた。