本当はもうちょっと寝ていたかったのだが。

好きな女の子に呼ばれちゃ、起きない訳にはいかないでしょう。

そんな訳で、目を開けてみましたが。

真っ先に目に入ったのは、天井だった。

背中に柔らかい感触があって、身体にも布団らしきものがかけられている。

あれ…。僕いつの間に寝て…。

…いや、そんなことより。

…ここ、何処なんですかね?

目覚めた瞬間に記憶喪失とか、めっちゃ困るんですけど。

そんな漫画みたいな展開は嫌だ…。

ちょっと起き上がって、現状を把握しよう。

…と、思ったら。

「あ!お兄ちゃん、起きたの?」

…は?

傍らに、花札で遊んでいる幼女がいた。

一人花札って、それ面白いんですか?

その幼女が、丸くて大きな目をくりくりとさせて、興味津々の様子で僕を見つめていた。

いや、僕に幼女趣味はないので。はい。

で、この子は誰だ?

「あの…あなたは、」

「ちょっと待ってね!お母さん呼んでくるから!」

質問をスルーする系幼女。

まぁ、幼女の正体を聞いたところで、何がどうなるという訳でもないか…。

幼女は花札を置いて立ち上がり、襖を開けて駆け出していった。

アグレッシブ幼女ですね。

さっき、お母さんを呼んでくるって言ってましたっけ。

つまり、この家には大人もいるということだ。

じゃあ、その人に聞いてみる方が良いでしょう。

少なくとも、幼女よりは情報を持っていそうだし…。

僕は敷布団に手をついて、のろのろと起き上がろう…と、したが。

「いっ…たたた…」

ズキン、と左足首に鋭い痛みが走った。

何なんだ?

掛け布団を払い除けて、自分の足首を見ると、白い包帯がぐるぐると巻かれていた。

打撲?捻挫?骨折?

分からないけど、痛いものは痛い。

本当に何なんですか。

こんな怪我をした記憶は、全くないんですが?

それどころか、よく見たら。

僕はいつの間にか、ゆったりとした浴衣を着せられており。

その浴衣の下は、身体中、至るところに擦り傷や切り傷、痣が出来ていた。

身体の節々が痛いのは、そのせいですか。

僕は何?集団リンチにでも遭ったんですか?