「体調はどうだ?気分が悪くなったりは?」
俺は、少女の点滴の袋を取り替えながら尋ねた。
「平気です」
少女は笑顔で答えた。
平気とは言うが、その細くて小さな身体で、平気なはずがない。
近寄ってみると、血色が悪く、皮膚もガサついていた。
髪の毛も抜け落ちているのか、ピンク色のニット帽を被っていた。
何処から見ても、具合の悪い病人だ。
「本当に?気持ち悪いとか、吐き気はないか?」
「大丈夫です。昨日に比べたら、うんと良くなりました」
昨日。
俺は昨日、彼女に何があったのか知らないが。
この身体は、昨日の彼女の容態を覚えていた。
どうやらこの少女は、昨日は朝から熱を出し、吐き気を催し、一日中ベッドから起き上がれなかったらしい。
発作も起こして、一時は集中治療室に移動することも視野に入れていた。
成程、それで先程、あんなに深刻な顔で医療チームがミーティングしていたのか。
この少女は、見た目通り…酷く弱っている。
命が危ぶまれるほどに。
それなのに、少女は笑っている。
自分に迫る命の期限など、まるで理解していないかのように。
「…そうだ。身体の調子が良いなら、今晩、ここに遊びに来ても良いか?」
俺の口が、勝手にそう動いていた。
「えっ。遊びに来てくれるんですか?」
少女の顔が、ぱっと輝いた。
「あぁ。疲れない範囲でな」
「…!」
俺がそう答えると、少女はたちまちのうちに明るい笑顔を浮かべ。
「はい!来てください。小さいお兄さんも一緒ですか?」
と、嬉しそうな顔で尋ねた。
小さいお兄さんというのは誰だ、と俺は思ったが。
そこも勿論、身体が覚えていた。
小さいお兄さんというのは、さっき話していた、俺の後輩のことだ。
つまり俺は、逆に、大きいお兄さんということになる。
「あぁ。二人で来るよ」
「…!嬉しいです。来てください」
少女は、年相応の無邪気な笑顔で言った。
少女の顔は年相応なのに。
身体の方は、実年齢よりずっと幼く見えた。
「何をして遊びますか?トランプ?折り紙?あっ、じゃあ、似顔絵も夜までに描いておかなくちゃ」
遊びに来ると言われたのが、余程嬉しいらしく。
少女は、広いベッドの上ではしゃいでいた。
「分かった、分かった。あんまりはしゃいだら駄目だぞ、調子が悪くなるから」
「あっ、はい!」
「それじゃあ、また後で来るからな。夕食も、ちゃんと食べるんだぞ?」
「分かりました!」
痩せ細った、痩けた頬で。
少女は、恐らく自分に出来る最高の笑顔で答えた。
俺は、少女の点滴の袋を取り替えながら尋ねた。
「平気です」
少女は笑顔で答えた。
平気とは言うが、その細くて小さな身体で、平気なはずがない。
近寄ってみると、血色が悪く、皮膚もガサついていた。
髪の毛も抜け落ちているのか、ピンク色のニット帽を被っていた。
何処から見ても、具合の悪い病人だ。
「本当に?気持ち悪いとか、吐き気はないか?」
「大丈夫です。昨日に比べたら、うんと良くなりました」
昨日。
俺は昨日、彼女に何があったのか知らないが。
この身体は、昨日の彼女の容態を覚えていた。
どうやらこの少女は、昨日は朝から熱を出し、吐き気を催し、一日中ベッドから起き上がれなかったらしい。
発作も起こして、一時は集中治療室に移動することも視野に入れていた。
成程、それで先程、あんなに深刻な顔で医療チームがミーティングしていたのか。
この少女は、見た目通り…酷く弱っている。
命が危ぶまれるほどに。
それなのに、少女は笑っている。
自分に迫る命の期限など、まるで理解していないかのように。
「…そうだ。身体の調子が良いなら、今晩、ここに遊びに来ても良いか?」
俺の口が、勝手にそう動いていた。
「えっ。遊びに来てくれるんですか?」
少女の顔が、ぱっと輝いた。
「あぁ。疲れない範囲でな」
「…!」
俺がそう答えると、少女はたちまちのうちに明るい笑顔を浮かべ。
「はい!来てください。小さいお兄さんも一緒ですか?」
と、嬉しそうな顔で尋ねた。
小さいお兄さんというのは誰だ、と俺は思ったが。
そこも勿論、身体が覚えていた。
小さいお兄さんというのは、さっき話していた、俺の後輩のことだ。
つまり俺は、逆に、大きいお兄さんということになる。
「あぁ。二人で来るよ」
「…!嬉しいです。来てください」
少女は、年相応の無邪気な笑顔で言った。
少女の顔は年相応なのに。
身体の方は、実年齢よりずっと幼く見えた。
「何をして遊びますか?トランプ?折り紙?あっ、じゃあ、似顔絵も夜までに描いておかなくちゃ」
遊びに来ると言われたのが、余程嬉しいらしく。
少女は、広いベッドの上ではしゃいでいた。
「分かった、分かった。あんまりはしゃいだら駄目だぞ、調子が悪くなるから」
「あっ、はい!」
「それじゃあ、また後で来るからな。夕食も、ちゃんと食べるんだぞ?」
「分かりました!」
痩せ細った、痩けた頬で。
少女は、恐らく自分に出来る最高の笑顔で答えた。


