案の定。
俺の予想通り、俺の身体は勝手に巡回してくれていた。
患者の容態を聞いて回ったり、血圧や体温を測ったり、点滴の袋を取り替えたり。
俺にはよく分からない機械を、当たり前のように手を動かして使っていた。
本当に、自分の身体じゃないようだ。
勝手に動く。
如何せん俺には看護師の知識がない為、身体が勝手に動いてくれるのは有り難い。
…いや、有り難くはないか。
何せ、俺はこんなことをしている場合ではないのだ。
何があって、俺が看護師などやっているのかは知らないが。
俺には、他にやるべきことがある。
それなのに、俺の身体は自由に動いてくれない。
看護師としての仕事は、テキパキこなしているが。
それ以外のことが出来ない。
俺がどんなに、白衣を脱いで外に出たい、外の様子を見に行きたいと思っても、身体がそれを許さない。
非常に不便だ。
俺は、こんなことをしている場合じゃないのだが…。
そう思いながら、俺の足は、俺の意志に反して。
一つの個室部屋の前で、足を止めた。
…ここは…。
部屋の前についている、名前のプレートを見る。
この名前、先程ミーティングで、囲んでいたカルテに書いてあった名前だ。
後輩の青年が、夜に訪ねてみようと言った者がいる部屋。
俺は、その病室の扉を開けた。
一歩中に入ると。
「あっ!お兄さん、いらっしゃい」
ベッドの上で、クレヨンを片手に絵を描いていた少女が、嬉しそうにこちらを向いた。
この少女が…先程の…。
まだ年端も行かない、本当なら青空の下で駆け回っているような年頃の子供。
しかし彼女は、カルテに書いてあった年齢よりも、ずっと幼く見えた。
身体は小さく、そして細かった。
まるで枯れ枝のような腕に、点滴の針が刺さっていた。
それでも、少女は笑顔だった。
俺の姿を認めるなり、クレヨンを置いて、画用紙を裏返しにした。
「…?今、何を隠したんだ?」
見られたら困るようなものでも?
「えへへ。今、お兄さんの似顔絵描いてたんです。完成するまで、見せてあげません」
少女は照れ臭そうに言った。
成程、そういうことだったか。
ならば、深く聞かない方が良いだろうな。
俺の予想通り、俺の身体は勝手に巡回してくれていた。
患者の容態を聞いて回ったり、血圧や体温を測ったり、点滴の袋を取り替えたり。
俺にはよく分からない機械を、当たり前のように手を動かして使っていた。
本当に、自分の身体じゃないようだ。
勝手に動く。
如何せん俺には看護師の知識がない為、身体が勝手に動いてくれるのは有り難い。
…いや、有り難くはないか。
何せ、俺はこんなことをしている場合ではないのだ。
何があって、俺が看護師などやっているのかは知らないが。
俺には、他にやるべきことがある。
それなのに、俺の身体は自由に動いてくれない。
看護師としての仕事は、テキパキこなしているが。
それ以外のことが出来ない。
俺がどんなに、白衣を脱いで外に出たい、外の様子を見に行きたいと思っても、身体がそれを許さない。
非常に不便だ。
俺は、こんなことをしている場合じゃないのだが…。
そう思いながら、俺の足は、俺の意志に反して。
一つの個室部屋の前で、足を止めた。
…ここは…。
部屋の前についている、名前のプレートを見る。
この名前、先程ミーティングで、囲んでいたカルテに書いてあった名前だ。
後輩の青年が、夜に訪ねてみようと言った者がいる部屋。
俺は、その病室の扉を開けた。
一歩中に入ると。
「あっ!お兄さん、いらっしゃい」
ベッドの上で、クレヨンを片手に絵を描いていた少女が、嬉しそうにこちらを向いた。
この少女が…先程の…。
まだ年端も行かない、本当なら青空の下で駆け回っているような年頃の子供。
しかし彼女は、カルテに書いてあった年齢よりも、ずっと幼く見えた。
身体は小さく、そして細かった。
まるで枯れ枝のような腕に、点滴の針が刺さっていた。
それでも、少女は笑顔だった。
俺の姿を認めるなり、クレヨンを置いて、画用紙を裏返しにした。
「…?今、何を隠したんだ?」
見られたら困るようなものでも?
「えへへ。今、お兄さんの似顔絵描いてたんです。完成するまで、見せてあげません」
少女は照れ臭そうに言った。
成程、そういうことだったか。
ならば、深く聞かない方が良いだろうな。


