何なんだ、この人達は。

いきなり人に、パシリを言いつけておいて。

帰ってきてみたら、人様の弁当箱を勝手に開けて、中身を床にぶちまけて台無しにし。

買ってきた食べ物にケチをつけ、挙げ句食べずにゴミ箱に捨てるとは。

おまけにこの人達は、買ってきてもらったのに、お金を返すということもしないのだ。

それどころか。

「あっ。えっ?」

いきなり、一人が俺の制服のポケットに手を入れ。

俺の財布を、勝手に取り出した。

見覚えのない財布だが、確かにあれは自分のものだと分かる。

返してくれ、と言いたかったが、何故か言葉にならなかった。

「言いつけも守れないワンコに、金なんて必要ねーよなぁ」

彼はにやにやしながら、人様の財布に手を付け。

中から、数枚の紙幣を取り出して、自分のポケットに突っ込んだ。

え、これって。

まさかあの、伝説の…カツアゲ?って奴?

…初めて見た。

「こいつ、生意気に万札持ってるぜ」

「馬鹿には勿体無い金だよな」

「ま、小銭くらいなら、ワンコにもくれてやるよ」

と、言って。

わざわざ小銭入れのチャックを開けた状態で、俺に財布を投げ返してきた。

小銭入れが開いているものだから、中に入っていた小銭が、床に散らばる。

俺、唖然。

こんなことされたら、俺だったらびっくりして、しばらく動けなかっただろうが…。

何故か俺は、自分の意志に反して床にしゃがみ込み。

雑多に散らばった小銭を、一枚一枚拾い始めた。

自分で自分の行動に驚くが、動かす手は止まらない。

この惨めな様子を見て、ゲラゲラ笑い声を立てるクラスメイト三人を、睨みつけることさえしない。

それどころか、ぐちゃぐちゃになったお弁当の残骸も、文句の一つも言わず自分で片付ける始末。

本当に、俺は…何をやってるんだ?