こんなにも大変な(?)思いをして、クラスメイトの為に昼食を買いに行ったというのに。

彼らは、戻ってきた俺を見て一言。

「おせーんだよ。何グズグズしてんだ」

ちょっと。それはあまりにも酷いのでは?

ありがとうとか、お疲れ様とか、そんな一言が出てこないものか。

しかも。

「お前があんまり遅いからさぁ、代わりにお前の弁当食っちまおうかと思ったんだけど」

と、三人のうち一人が、にやにやしながら空の弁当箱を掲げて見せた。

見覚えはないはずなのに、「あれは自分の弁当箱だ」という確信があった。

「一口食ったら不味過ぎて、思わずひっくり返しちまったよ」

言われて、彼の足元を見ると。

俺の弁当箱に入っていたであろう、食べ物の残骸が、床に散らばっていた。

色とりどりの、ご飯や卵焼きやブロッコリーが、教室の床に溢れている。

…なんということを。

故意に食べ物を粗末にするなんて、あってはならないことだ。

嫌がらせにしたって、これはあまりにも酷い。

食べ物を無駄にした挙げ句に、これを作ったであろう人の努力も、踏みにじったのだ。

思わず叱責を飛ばしたくなったが、その前に。

男子生徒の一人が、そんなことはもうどうでも良い、とばかりに、俺の持っていたビニール袋を引ったくった。

「さーて、メシだメシ。お前も食えよ…もう犬の餌だけどさ!」

彼は、散らばった弁当箱の中身を見下ろして、馬鹿にしたように言い。

他の二人は、釣られてゲラゲラと下品な笑い声を立てた。

…なんて連中だ。

親の顔が見てみたい。

しかも、彼らの蛮行はこれだけに留まらない。

「はぁ?何これ。あんまんじゃん。俺肉まんって言わなかったっけ?」

肉まん希望の男子生徒が、あんまんを一口齧って、顔をしかめた。

あ、そうだったっけ。

「あの…肉まんが、売り切れで…」

「売り切れ?だから何だよ。見つかるまで探してこいよ、頭足りねーなお前は」

むっ。

酷い言いようだ。いくら食べたかろうが、売り切れていたなら仕方ないじゃないか。

何でそれだけで、頭足りない呼ばわりされるんだ。

しかも。

「あんまんなんて、こんな甘ったるいもの要らねーよ」

あんまんがお気に召さなかったらしい彼は、手にしていたあんまんを、そのままゴミ箱にダンクシュート。

僅かに一口だけ食べられたあんまんは、ボスッ、と音を立てて、ゴミの山に沈んだ。

な、なんという…食材への冒涜。

いかに食事の必要がなく、食べ物とは縁遠い生活をしている俺でも、この蛮行はあんまりだと思う。