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 莉愛はすかさず、タイムを取った。

 あと1点、狼栄に取られれば私達の負けだ。

 このまま狼栄に流れを持って行かれるわけにはいかない。

 莉愛はタオルを用意し、みんなを待っていると、汗を拭う動作も出来ないほど疲れ切った拓真達が戻ってきた。

 ああ……みんな、こんなにボロボロになって……それでも、それでもボールを追いかけてくれている。少しでも体力を回復させるため、皆をベンチに座らせると、充と流星の足が、痙攣し始めていることに気づく。

 筋肉疲労による痙攣だ。痙攣は脱水でも起こるため、みんなにスクイズボトルを手渡し水分補給を促す。しかし水は口の端からこぼれ落ちて行く。水分飲むこともままならないほど荒い呼吸を繰り返す皆を見つめ、莉愛は涙が出そうになるのを必死に堪えた。

 こんな疲労困憊状態のみんなに、私はもう一度、戦うことを強いる言葉を掛けなければいけない。

 ごめんね、みんな……。

 もう少しだけ、私のワガママに付き合って。


「みんな酷い顔ね。ほら上を向きなさい。ねえ、みんな……私達がここまで来るって、誰が予想していた?私達以外、誰も想像すらしていなかったと思うよ。そんな私達が狼栄に勝って春高へ行く。ここが……この試合が最後じゃない。ここから始まるの。さあ、行きなさい。私に勝利を捧げなさい!」

 みんなの瞳に光が戻ってくる。

 拓真がベンチから立ち上がり、タオルを乱暴に放り投げた。

「女王を守り抜いて、俺達が春高行くぞ!」

「「「「「おーー!!」」」」」

 祐樹、充、流星、洋介、瑞樹達も拓真と同様に瞳に光が戻り、真っ直ぐに莉愛を見つめると、乱暴にタオルを投げ捨て、コートに戻っていった。コートと言う戦場へと向かう男達の背中を見つめ、莉愛は嬉しく思った。初めて出会った頃は、いつも自信が無さそうで、それでいて負ければ悔しそうに唇を噛んでいたと言うのに。今は勝つことしか頭にない。みんなホントに強くなった。