「お待たせしました、黒糖饅頭とかぼちゃ饅頭を二十個ずつお包みしました」

 包んだお饅頭の紙袋を花南様にお渡しする。

「ありがとう。助かるわ!」

「お会計全部で、二五〇〇円になります」

「二五〇〇円ね」

 現金を二五〇〇円ちょうど受け取り、領収書を渡す。
 
「ありがとうございました。またお待ちしております!」

「ありがとうございました〜」

 花南様を出口で見送ると、私は和菓子職人の悠月(ゆづき)さんに「悠月さん、黒糖饅頭とかぼちゃ饅頭の追加をお願いします!」と伝える。

「黒糖とかぼちゃね! 了解!」

 店の奥から、和菓子職人の悠月さんの声が聞こえてくる。
 悠月さんの声は、相変わらずカッコイイ。渋さの中にも爽やかさがあって、とても聞き惚れるくらいいい声をしている。イケメンボイスとは、このことではないかと思う。

 悠月さんは四代目の和菓子職人で、お父様が亡くなってからこの角野屋を受け継いだ人だ。
 まだ33歳と若いのに、立派な跡継ぎとしてこの角野屋を守り抜いている。

 本当に素晴らしい人なんだ、悠月さんは。
 私はそんな悠月さんに、好意を寄せている。でもこの気持ちは、誰にも内緒なんだ。