社長っ、このタクシーは譲れませんっ!

 


 ロビーに入ってすぐ、前社長の知り合いという恰幅のいい男と出会った。

 その男は将臣に挨拶したあと、千景を見て言う。

「新しい秘書の方ですか?
 お美しいですな」

 今どきの体型ですね。
 九頭身はありそうだ、と笑ったあとで、笑わずに将臣を見て言う。

「前社長は、見た目で秘書を選んだりはなさいませんでしたけどね。
 まだお若いのに社長になられて浮かれてらっしゃるのかもしれませんが。

 まあ、お気をつけなさい。
 そこここにあなたの敵は潜んでますよ」

 将臣と三人、深々と頭を下げて見送ったが、将臣は顔を上げた途端、チッと舌打ちをし、こちらを睨んできた。

「なんで、お前、無駄に美人なんだ
 俺のデビューにミソつけやがってっ」
と忌々しげに言われる。

 そんなディスられ方は初めてですよ……。