社長っ、このタクシーは譲れませんっ!

 大丈夫ですよ~と苦笑いしながら、向きを変えたとき、社史のピラミッドがあるテーブルに腰が当たった。

 ひっ、と思ったが、隅に置かれていた小冊子が一冊落ちただけだった。

 そういえば、小冊子、最後の仕上げ、見てないな。

「今日、社史といっしょに持って帰って見なよ」
と坂巻さんたちが言ってたけど、と思いながら、料理を置いたあと、それを拾いに戻る。

 社員にしか配っていないその小冊子は、最後のページが開いて落ちていた。

 手にして笑う。

 いつの間にかみんなが載せていたらしい結婚式と披露宴と猫屋敷での猫会(?)の写真がそこにはあった。

 将臣と、千景と、みんなの弾けるような笑顔と猫たちの側にCongratulations! の文字が踊っていた――。


                         完