社長っ、このタクシーは譲れませんっ!




 次の日、千景は廊下で将臣と出くわした。

 やっぱり、会社で見る社長はパリッとしてて格好いいな。

 ……いや、家では、クッタリしている、というわけではないのだが、と思いながら、少し話す。

「まだなにか入れそびれたエピソードないかな~と不安になるんですよね」
「もう印刷発注したんだろ?」

「そうなんですけど。
 小冊子の方は、まだなんですよ。

 ギリギリまで置いておこうって、いいネタあるかもしれないから」

「……食堂のタンシチューの秘密が書いてある小冊子な。
 俺のインタビューは差し替えたんだろうな。

 彼女いますかとか。
 結婚した今となっては意味ないだろ」

 そうなんですけどね~と千景はなんとなく照れる。

 ……結婚式のときの社長、格好よかったな。

 花嫁がまるで添え物だった気がするけど……。

 海の見えるチャペルで式を上げ、披露宴をしたあと、猫屋敷で二次会をやった。

 いや、二次会とか言いながら、全員ほぼ来ていたので、場所だけ移動した披露宴の延長みたいになっていたが。

 猫たちやヘブンズハウスの人たちも参加できて、楽しかったな、と千景は思い出す。