社長っ、このタクシーは譲れませんっ!

 まだその段階か、と思ったが、八十島の方が溜息をつき言う。

「そんな切り出し方をしてくると言うことは、嵐山のことですね。
 いいです、別に」

「諦めたのか?」

「いや、そういうわけではないんですけど。
 社長の方がハッキリしないと、私もどうにも動きづらいではないですか」

 いや、何故だ、と思ったが、八十島は罰悪そうに言う。

「未だ九条真美に付きまとわれておりますが。
 彼女はもともと社長の許嫁ではないですか。
 申し訳なくて」

 いや、付きまとわれてる方が申し訳ないというのも妙だと思うが……と思いながらも、将臣は言った。

「大丈夫だ。
 あいつは現在の俺のことも知らないし。
 ちゃんと調べようとしない程度にしか、俺に興味ない許嫁だし。

 そもそも俺に向かって、どちら様ですか? 千景さんとお幸せに、みたいなこと言ってた奴だぞ」

「……そうなんですか。
 すみません」
と謝りながら、八十島が教えてくれる。