社長っ、このタクシーは譲れませんっ!




「社長、なに溜息ついてるんですか」

 数日後、将臣は社長室で八十島にそう問われ、顔を上げて言った。

「いや、すまん。
 仕事に集中してないわけじゃないんだが……」

「言い訳はいいです。
 なに考えてらっしゃるんですか?

 仕事に差し障りが出ても困るので、私でよかったら、相談に乗りますよ」

 相談か。
 まあ、してみたくはあるが。

 こいつ、千景を好きなんだよな。

 どうしたら千景が自分を振り向いてくれるか。
 経験値が低すぎてわからない、なんて話をしたら、八十島に悪くないだろうか。

 でもまあ、すでに心が他の女性に向いている可能性もある、と思い、将臣は訊いてみた。

「……お前、九条真実とはどうなってんだ?」
「つきまとわれております」

 間髪入れずに八十島は言う。