社長っ、このタクシーは譲れませんっ!

 どうしたら、猫たちより仏より、ヘブンズハウスの近所の人たちより、大家さんより、キャベツより、こっちを見てくれるのか?

 将臣も猫まみれの千景のスマホの写真を見せてもらっていた。

 猫以外に印象的なのは、いい感じに巻いたみずみずしいキャベツ。

 そして、手だけの自分――。

「なにも千景さんの気を引けそうなことを思いつかないのなら。
 とりあえず、尽くして尽くして尽くしまくってみたら?

 私はそれで、あんたのお父さんと結婚したのよ。

 お父さんは、あんたと一緒で、イケメンで金持ちで性格がいいことだけが取り柄の、チャラついたところのない、恋愛に関しては、いまいちな人だったんだけど。

 ともかく、熱心にいろいろしてくれたのよ」

 そんな父を上げているのか下げているのかわからないセリフを聞きながら、将臣は、

 説得力あるな……と思ってしまう。

 今の二人の関係もその延長線上にあるからだ。

 父は未だに母に、尽くして尽くして尽くしまくっているのだが。

 このように母はつれない。

 だが、愛情がないというわけでもないようだ。

 そして、父は母に尽くすことが生きがいで喜びらしい。

 でも、俺は違うぞ、と将臣は思っていた。